prologue
生活する「私」の空間と、周辺環境の「公」間に緩衝帯を設けたことで、まちにそっと溶け込みながら、内部での暮らしやすい生活を守る住まいが完成しました。
緩衝帯(バッファーゾーン)と言って工場の多い地域と住宅地の間に公園や緑地を挟んで街を設計するなんて話を聞いたことはありませんか?
緩衝とは、2つの異なるものの間に挟まりながら衝撃を和らげる役割を指します。
建替えだからこそわかった。守りたいものと変化させたいもの。
南の角地にあるC様邸。
敷地南側の交差点は日当たりのいい特別な場所です。
本来であればその肯定的な環境に窓やウッドデッキを作り生活したいところでしたが、特別な場所にはたくさんの人が集まってきます。
まち全体で考えれば、当然のことであり、そのような場所を内包するまちには活気がみなぎっています。
しかしもう一方で、住むために必要なプライバシーを確保することは簡単ではありませんでした。
閉鎖された外観にしないための工夫
まちの人が集まる特別な角地、人が集まりやすい雰囲気は大切にしたかったC様。
外観は丸みをもたせ、木製の格子を取り付けました。
外からは家の中に人がいる気配と共に、温かみと親しみやすさが感じられます。
室内からの眺め。
南側に設けた大きな窓からは暖かな陽光をたっぷりと取り入れ、外の様子も感じ取れる室内。
格子によってプライバシーも守られています。
東側にも大きな窓。家にいながらまちの人たちと交流できる場所です。
窓から見えるのは玄関土間。正面にある壁の向こう側には家族がくつろぐリビングが広がります。
LDKと玄関土間の間の仕切りを取り払うことで、奥行き感のある開放的な空間になりました。
まだらな色合いの無垢の床は白を基調とした内観にナチュラルさをプラス。
鉄骨階段が、光を通して描き出す美しい陰影は、まるで海の中のよう。
回遊性がオリジナリティーと便利な動線をつくる
サーフィンをはじめ、キャンプやスケボーなどアウトドア派の家族のために土間収納を充実させ回遊性を持たせました。
広さが十分にあるため、愛犬の小屋を設けることも可能。
奥へと進むと2つの洗面を通ってリビングへ抜けるようになっているから動線も便利。
写真の洗面では、愛犬の散歩から帰ってきたときに、気軽に手入れができるのが嬉しいです。とC様。
生活時間帯の異なる家族が暮らしやすい間取
間取りを設計する際、生活時間帯の異なる家族がお互いに気兼ねせずに暮らせる間取。という要望がありました。
子ども部屋
バルコニーへ向かう通路を隔て、2つの子ども部屋を設けました。
ブルーのアクセントクロスは息子さんのチョイス。照明も好きなものを設置した。
家族それぞれが、自分の個室を持ち、それぞれの空間づくりを楽しんでいます。
母の部屋
階段吹抜けに面した母の部屋。
部屋にいてもリビングの様子が伺え、ご主人の帰宅が深夜になっても帰ってきた気配が感じられます。
家族の生活を優しく見守る母の部屋となりました。
父の部屋
キッチンの奥にある居室は父の部屋。
帰りが深夜になることもあるというご主人。
家族は寝ていても、家に帰ってきたら自分の時間も大切にしたい。
家族の眠りを妨げないよう、居室は他の家族の居室とは分断された位置に設けました。
1階から家を守る父の部屋です。
住宅とは思えないようなスケールのバルコニー
住宅ではあまり見られないスケールのバルコニー。
深い軒があるので、雨の日も洗濯物を濡らしません。
サーフガーデン
通りに面した庭は、美しい街並みをつくり、打ち寄せる波のように季節の移ろいをそこに住まう家族と行き交う人々に知らせてくれます。
そんな、家族か豊かに暮らせるための要素を庭にも取り入れました。
丸みのあるフォルムと砂利や石の配置は打ち寄せる波をイメージしたもの。
父の坪庭
父の部屋に面した、プライベートな坪庭。
お父さんの坪庭のはずだったけど、お兄ちゃんがコーヒーを飲んだりしてよく使っています。と奥様。
坪庭に植えたアガベ(シルバーサーファー)は、かなり大きく成長する植物なので今後が楽しみ。
建築家と叶えた、新しい、私たちらしいらしい住まい
生活時間帯の異なる家族。それぞれのパーソナルな空間としての個室を多く内包しながらも、家族で一緒に過ごせる「共」としてのスペースは開放的で使い勝手が良い住まい。
さらに、外部からのプライバシーに配慮しながらも、外部に対して開けた住居となりました。
建築家の長谷部先生は、プライバシーと環境の濃度が波しぶきのように絡まりながら、そこを都合よく行ったり来たりする様は海岸に打ち寄せる波を想像させる。豊かに生活するための器を目指しこの建物を「Surf house」と名付ける。と言っています。
ストーリー
中古物件を購入したのですが、老朽化も進みそろそろ建替えどきかなと新築することを考え始めたのが、C様の家づくりの始まりでした。
色々な住宅会社を見て回り、間取図の設計まで話を進めていたメーカーさんもありましたが、何か引っかかるものがあって。踏み切れずにいたC様。
そんな時、R+houseのモデルハウスを柏の葉展示場で見学したんです。
「イメージにぴったりとはまった感じがしたんです。建築家とつくると家というコンセプトも面白いと思いましたね。」とC様。
【建築家の先生との打合せはどうでしたか】
建替えだったので、建築家の先生にはその家での良いところ。困っていること、変えたいことをメインにお話ししました。
一番は、家が開けている南東の角に人だまりができやすい。ということだったそう。
人だまりからプライバシーを守りたい。それは、人を寄せ付けないと言う意味ではなく、親しみのある雰囲気は維持したい。そして南東の明るい陽射しや解放感は取り入れたい。
という要望でした。
【その要望は叶いましたか】
「叶いました~」と奥様。
以前は大きな窓が南東側についていたのですが、シェードやカーテンで家の中を隠しているような状態でした。
このお家になってから室内は丸見えにならないのに、陽光も入り明るくて過ごしやすいです。
これまで、挨拶するくらいだった近所の方が「あそこのお家の方ですよね。」と話しかけてくださるようになって。
嬉しいですし、一番驚いています。
社交的な家になりました。
また、朝の身支度をするときの動線がすごく良くなって、ストレスが無くなりました。家族で過ごす場所を広くしたので、個々の居室は小さくなりましたが、逆に自分だけの落ち着ける居場所になりました。
子どもがリモートで授業を受けているのですが、自分の部屋にこもらずリビングで勉強するようになりましたね。
【一番のお気に入りの場所はどこですか】
長い土間のベンチですね。縁側にいるようにポカポカして気持ちが良いです。と奥様。
夕暮れから夜にかけての外観が好きです。犬の散歩から帰ってくる途中、ライトアップされた我が家が見えてくると見とれてしまいます。とご主人。
そんな場所が自分の帰る居場所(家)だなんてとっても羨ましいです。
【これから家づくりをする人へのメッセージ】
思ったことは言葉にした方が良いと思います。
伝わるまで、何度も”伝える”。それが大切だと思います。
特にイメージで話を進めることの多い家づくりは、きちんと伝わっていないとずっとモヤモヤしてしまって。他の会社で踏み切れずにいたのもそのモヤモヤが原因だったかなと思います。
また、時間の許す限り、いろいろな住宅会社を見た方が良いと思いますよ。とご主人。
僕らがR+houseを気に入ったのも、他を見ていたからこそだったと思うし、たくさん見たからこそイメージに合った住宅会社に出会えて、そこを選ぶことができたんだと思います。
知らなければ、選べないし、良さを比較することも出来ないですもんね。
C様。インタビューとお写真の撮影のご協力、ありがとうございました。
写真撮影の間も、たくさんの人がC様邸の前で足を止めます。
ガーデンの植物を見て「なんていう名前の花だろう?」とか「緑がきれいですね~」とか。
声をかけてくださいました。
家は家族のものだけれど、ちいきに溶け込みながら、きれいな街並みをつくったり、行き交うひ人の心までも豊かにしてくれるような家もあるんだなと感じました。
1階・間取り図
中央のLDKを囲むようにL字の土間を設けたことによってリビングへは2方向からのアクセスを可能になり、使いやすくなりました。
玄関土間の吹抜けは迫力満点。南東からの陽光をたっぷりと取込み明るく過ごしやすいリビングになりました。
2階・間取り図
コンパクトに作られた居室。家族それぞれのプライベートスペースは部屋通しがくっつかないように配慮されています。また、それぞれに収納スペースもあるのでコンパクトながら使いやすそうです。