建物に対する制約が多いエリアで、ご夫婦が思い描く「四角」「黒」といった外観デザインをそのまま形にすることは難しい、という中での家づくりでした。そのため、役所の担当部署に何度も通い、建物の大きさや素材、色などどこまでならOKなのかを細かく確認し、どうしたらご夫婦の理想を形にできるのか、試行錯誤しながら設計を進めていきました。この土地ならではの魅力が存分にある場所なので、「個人の豊かさと社会性の両立」をT様邸のテーマに、社会とのつながりを大切にしつつ、外からでもご夫婦の個性を感じられるように意識してデザインしています。設計当初、「土いじりはしないので庭はいらない」とお話されていたT様。ただ、社会性を考えると街並みに馴染む「木」は大切な要素であり、植物があることで家自体がさらに映え、心豊かな暮らしにつながるという理由から、庭も提案させていただきました。結果として想いに共感いただき、庭も採用いただきましたが、お引き渡し後にお会いした際、種から花を育て、土いじりを楽しんでいらっしゃるT様の姿には驚きました。家づくりはこれまでのご自身の価値観を見直すきっかけでもあると私たちは考えていますが、T様のよりいっそう心豊かに暮らしを展開されている姿にうれしくなりました。